「雲ノ平トレイルクラブ」のメンバーとして活動しています
以前、北アルプスの黒部源流域を探訪した記事(https://kenmorij.org/blog/2021/09/03/1146/)において、最奥部にある「雲ノ平」エリアを訪れたことに少しだけ触れました。
薬師岳や水晶岳、鷲羽岳など名立たる百名山の並ぶ峻険な山域の中で、奇妙なほどに穏やかな湿性草原の風景と、そこに建つ雲ノ平山荘の建築美が相まって喚起される、どこか懐かしいような、落ち着くような感覚は、静かながらも強い印象として自分の中に残り続けました。
その後再訪した際に、当地において有志のボランティアを募り、登山道整備を行う、「雲ノ平登山道整備ボランティアプログラム」という取り組みがあることを知り、2022年に応募。作業道づくりの経験があることなどを評価いただき、多数の応募者の中から採用していただきました。
私が日頃作業を行っている地域の山林の自然環境とは大きく異なり、寒冷な高標高地では生命活動が弱く、表土が薄いため、ひとたびそれが流出されたら容易に植生は復元されません。
そういった環境下での作業には難しさも多くありますが、雄大な景観の中で、その景観に見合った施工を考え、実践することは大きな喜びでした。
そしてプログラム終了後は、同様の参加者や専門家らから構成された、一般社団法人「雲ノ平トレイルクラブ」のメンバーとして加わり、活動しています。
実情として、国立公園における制度上の問題や財源不足などの諸課題により、長期間にわたった、大々的な整備を行う体制はまだ整っているとはいえません。
そのため、今は短期の整備活動と並行し、様々な課題解決を行うための組織づくり、地元自治体や環境省など行政との連携、情報記録・発信を進めているところです。
やるべきことは多いですが、大工、設計士、Webディレクター、研究者、アウトドア関係者、アーティスト、冒険家など、選りすぐりの多様かつ愉快なメンバーで構成されている「雲ノ平トレイルクラブ」は、対応可能な範囲が広く、実に頼もしいです。個人的には文章など情報発信分野で動くことが今のところ多く、
Webサイト(https://kumonodaira-trailclub.com/)の一部の文章や、以下に紹介する各種記事の作成を行っています。
https://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=7268
(私が参加した整備プログラムのレポートを寄稿した冊子『これでいいのか登山道』)
(支援をいただいたYAMAP社にて公開したレポート記事)
長年問題の普及・啓発や解決に取り組み、かつ独力で整備も行う中で植生復元の成果を挙げてきた、「雲ノ平山荘」の小屋主・伊藤二朗さんについてなど、雲ノ平のことについてはまだまだ語るべきことがたくさんあります。
トレイルクラブのサイトやSNSの方で多くの情報を発信していきますので、ぜひチェックしてみてください。
3年目の吉賀町
吉賀町に移住し、今年で3年目となります。長いとは言えない期間ですが、「協力隊(森師)」として活動する中での林業関係の様々な学びと実践、そして地域内に残る自然のつながりとそこに生きる人々の豊かな自然観に触れたことで、様々な物事の見方・とらえ方も大きく変わったように思います。
この2年間は山・森のことを考えることが多かったですが、最近は川への関心が強まっています。高津川は本流だけでなく、支流も素晴らしいです。
当たり前に身近にある自然の造形美やそこに棲まう魚たちの存在は、この地域の最も豊かな一面だと思います。
環境性と経済活動を良いバランスで両立させることには困難が伴いますが、個人の力では難しくとも、各々の特性を活かした協力関係の上でなら、後に残る良いものがつくりだせるように、山岳整備の世界に関わる中でぼんやりと思っています。