リレーエッセイ

何故に「世界の林道」(「全国林業普及協会」2018年9月15日刊) を出版したのか

酒井秀夫(東京大学大学名誉教授・森林利用学)

 この本を出版することになった直接の契機は、日本林道協会(山田壽夫専務理事)の3か年にわたる調査事業に協力したことですが、海外出張などで今まで聞き留めてきた林道や林業などのメモも加えて1巻としました。  そもそも「林道技術」は、国によって変わるものではありません。地形、傾斜、土質、通行車両、交通量、設計速度が決まれば、形は大体同じになるはずです。しかし、「森林、林道は誰のもの」、「林業とはそもそも何か」、「国有林の役割は」、などということになると、その国の歴史や文化、経済、社会に大きく左右されます。  北欧は、森林を開発していく過程で、補助金に頼らず、事業体や集落が林道を自力で開設してきました。林道の割合が国の道路網の中でも大きな割合を占めています。いま、戦後まもなくから開設してきた道路の改良をすすめて、大形車両の通行、大量輸送を可能なよう…続きを読む

何故に「人口減少社会の未来学」を編集したのか

内田 樹(思想家・神戸女学院大学名誉教授)

 この本を編著で出すことになったきっかけは、人口減問題についてあまりに議論が足りないと感じたからです。人口減は天変地異ではありません。日本の人口がこれからどう推移するかはわかっています。国が出している長期予測では、総人口は2065年に中位推計で8800万人。現在の1億2700万人が47年で3900万人減るのです。年間83万人の人口減です。高齢化率も上がる。  けれども、それについて広範な議論を行い、採るべき政策について国民的合意をとりつけ、できる政策から実行してゆくという「当たり前のこと」が行われていません。  先日、毎日新聞が人口減を主題にした座談会を企画しました。そこで各界の人たちが集まって出した結論は「人口減は既定の事実と受け止めて、対処法をどうするか考えたらいい」「人口減に対応する社会システムを作る必要がある」というものでした。そん…続きを読む

「なぜ、委員会の名称が、“森をつくり直す”なのか」

天野 礼子(事務局長・作家)

いつも問われるのは、このタイトル中の一点です。 皆さんは、「日本人はどのように森をつくってきたのか」という、コンラッド・タットマン氏の本を読まれたことがありますか? そもそも、こんな本を外国人の日本近代史研究家に書いてもらわなければならない程、日本の森林研究者は、「親・林野庁」と「嫌・林野庁」に分かれ、不毛な対立に時間を使い過ぎてきてしまっていたのが、2003年までの日本の森林・林業界でした。 第2次世界対戦では、アメリカに家を焼かれました。無事帰ってきた戦士達の家も建てなければならず、全土でスギ・ヒノキ・カラマツの大規模造林がなされましたが、途中で材木が足りなくなり、“ロン(レーガン大統領)・ヤス(中曽根康弘総理)協定”で木材の輸入が自由化されてしまったことが、せっかく全土に植えた人工木がその後、全く間伐されず、林業そのものが衰退してしま…続きを読む