森を歩く③-東京大学北海道演習林編-

大雪山と樹海を歩く この夏、夏季休暇を利用して、北海道の中心部に聳える大雪山系を縦走してきました。 アルプスと比べて登山者の数も少ない中、ヒグマやエゾシカ、ナキウサギなどの貴重な野生動物たちが息づく様子や、構造土が生み出す不思議な景観、鮮やかな高山植物の花々を見ながら雄大なフィールドを計5日ほどかけて歩く、素晴らしい時間でした。 ただ私がこの旅行で北海道に来たのは、登山以外にもう一つの目的がありました。 それは「富良野市生涯学習センター」で開かれた、どろ亀さんとC.W.ニコルさんの追悼展示会「森の心、そして祈り」と、それと並行する形で催された「東京大学北海道演習林の見学会」に参加にすることでした。 北海道開拓期の1899年(明治32年)に創設された「東京大学北海道演習林」は、およそ2万3000haもの広大な敷地から「樹海」の名を持っています…続きを読む

第2回目の「POLO」での研修報告

この夏、昨年に続き「森師(もりし)」研修員は、奈良県東吉野村の「POLO BCS社」にお世話になり、3泊4日の研修を行いました。 このたびは吉賀町の岩本一巳町長にもご同行いただきました。今回主に学んだのは、以下の5点です。 ・「ウルトラザウルス」を用いたウィンチ集材 ・「壊れない道づくり」 ・木材利用、加工 ・奈良県東吉野村と吉賀町幸地の森の違い ・吉野林業の成熟期の森林の管理手法 「ウルトラザウルス」を用いたウィンチ集材 昨年度の森師研修員は、主に「作業道づくり」や既存道の整備を行いましたが、今年度夏季以降より「長伐期の森づくり」を目指すべく、選木、利用間伐を開始します。そのためには、新たに導入した5.8トンの重機「ウルトラザウルス」を存分に活用する必要があります。 このたびの研修では2日間の時間をかけ、「ウルトラザウルス」によるウィンチ…続きを読む

森を歩く②-屋久島編-

スギと屋久杉 先日、高校の時の研修旅行以来、2度目の屋久島を訪れました。日本の平均年間降水量の2~3倍(山岳部では5倍とも)もの雨の多さで知られる屋久島だけに、一週間の滞在の間もずっと雨続きで、九州最高峰・宮之浦岳山頂からの眺望もまったく得られませんでしたが、その分、屋久島の自然環境と水との深い関係を感じられる山歩きとなり、森というよりも、水そのものの中にいるように感じられる瞬間もありました。 屋久島といえば、1000年以上の樹齢を誇る屋久杉で知られますが、スギは水分をとても好む樹木で、そのことは私の現場である幸地の林内でも、水の通りのよいところのスギが肥大している様子がわかります。一方で、同じ日本の代表的針葉樹であるヒノキが屋久島でほとんど育って(植えられて)いないのは、雨の多さ、水の豊かさゆえに、乾燥を好むヒノキの生育に適していないため…続きを読む

森師(もりし)研修員の現場「幸地町有林」

幸地町有林について 我々「吉賀町」森師研修員が日頃作業を行っている現場が、島根県鹿足郡吉賀町「六日市(むいかいち)IC」のすぐ近く、吉賀町幸地(こうじ)地区にある「幸地町有林」。 およそ50年生のスギとヒノキによって構成される針葉樹の人工林ですが、いま日本全国に散在する、長く適切な管理がされてこなかった「暗く、荒れた森」とは違い、近年は定期的にきちんと間伐がなされてきたために、林内のほとんどの場所は適度に明るく、年輪幅の揃った良質な木々が育つ、「健全な森」です。 吉賀町にはシカの生息数が少ないということもあり、食害もなく、タラノキやコシアブラなどの山菜類や、サカキ、クロモジ、ユズリハなど多くの種類の広葉樹の下草が生えた、気持ちの良い緑の空間です。 この幸地町有林は、森師研修員が作業をする初の現場であるとともに、吉賀町に“大橋式作業道”がつけ…続きを読む

厳冬期の伯耆大山へ

中国地方の最高峰であり、その堂々たる独立峰の山容から富士とも並び称される伯耆大山。 登山好きとしても、中国地方出身者としても、その名前自体に親しみはあったのですが、鳥取という近場よりも、気持ちはいつもアルプスなどの遠方にばかり向いていたため、登る対象としての関心を持つことは特にありませんでした。   その大山の存在を強烈に意識するきっかけになったのは、昨年の5月、奥大山と呼ばれる山域にある烏ヶ山(からすがせん)に登りに行った時のことです。この山へ向かったのは、サントリー天然水のCMで宇多田ヒカルが登っていたことに影響されたためでしたが、テントを張った鏡ヶ成の広々とした気持ちの良い高原の景観、そして何より烏ヶ山山頂から目の前に聳え立つ大山南壁の圧倒的な迫力に、こんなとてつもない山と周辺の素晴らしい自然環境のそばに暮らしていながら、今…続きを読む