幸田文の『崩れ』を読む

「日本三大崩れ」とは 1991年に出版された幸田文の著書『崩れ』を読んでいて、「日本三大崩れ」という言葉が目に留まりました。 「崩れ」とは、大地震などに端を発する土石流による崩壊地のことで、「三大」は、主に静岡の「大谷(おおや)崩れ」、長野の「稗田山(ひえだやま)崩れ」、富山の「鳶山(とんびやま)崩れ」を指すのだそうです。 そしてこれらのうちの「鳶山崩れ」は、私が今夏に北アルプスに赴いた際に(前々回の記事『黒部源流めぐり』)、五色ヶ原付近で見た光景のことを指すのだと知りました。 幸田は、この光景を前に以下のように記しています。 憚らずにいうなら、見た一瞬に、これが崩壊というものの本源の姿かな、と動じたほど圧迫感があった。むろん崩れである以上、そして山である以上、崩壊物は低いほうへ崩れ落ちるという一定の法則はありながら、その崩れぶりが無体とい…続きを読む