国立公園管理の新たな体制づくりを志す、「雲ノ平トレイルクラブ」

「雲ノ平トレイルクラブ」のメンバーとして活動しています 以前、北アルプスの黒部源流域を探訪した記事(https://kenmorij.org/blog/2021/09/03/1146/)において、最奥部にある「雲ノ平」エリアを訪れたことに少しだけ触れました。 薬師岳や水晶岳、鷲羽岳など名立たる百名山の並ぶ峻険な山域の中で、奇妙なほどに穏やかな湿性草原の風景と、そこに建つ雲ノ平山荘の建築美が相まって喚起される、どこか懐かしいような、落ち着くような感覚は、静かながらも強い印象として自分の中に残り続けました。   その後再訪した際に、当地において有志のボランティアを募り、登山道整備を行う、「雲ノ平登山道整備ボランティアプログラム」という取り組みがあることを知り、2022年に応募。作業道づくりの経験があることなどを評価いただき、多数の応募…続きを読む

森を歩く③-東京大学北海道演習林編-

大雪山と樹海を歩く この夏、夏季休暇を利用して、北海道の中心部に聳える大雪山系を縦走してきました。 アルプスと比べて登山者の数も少ない中、ヒグマやエゾシカ、ナキウサギなどの貴重な野生動物たちが息づく様子や、構造土が生み出す不思議な景観、鮮やかな高山植物の花々を見ながら雄大なフィールドを計5日ほどかけて歩く、素晴らしい時間でした。 ただ私がこの旅行で北海道に来たのは、登山以外にもう一つの目的がありました。 それは「富良野市生涯学習センター」で開かれた、どろ亀さんとC.W.ニコルさんの追悼展示会「森の心、そして祈り」と、それと並行する形で催された「東京大学北海道演習林の見学会」に参加にすることでした。 北海道開拓期の1899年(明治32年)に創設された「東京大学北海道演習林」は、およそ2万3000haもの広大な敷地から「樹海」の名を持っています…続きを読む

第2回目の「POLO」での研修報告

この夏、昨年に続き「森師(もりし)」研修員は、奈良県東吉野村の「POLO BCS社」にお世話になり、3泊4日の研修を行いました。 このたびは吉賀町の岩本一巳町長にもご同行いただきました。今回主に学んだのは、以下の5点です。 ・「ウルトラザウルス」を用いたウィンチ集材 ・「壊れない道づくり」 ・木材利用、加工 ・奈良県東吉野村と吉賀町幸地の森の違い ・吉野林業の成熟期の森林の管理手法 「ウルトラザウルス」を用いたウィンチ集材 昨年度の森師研修員は、主に「作業道づくり」や既存道の整備を行いましたが、今年度夏季以降より「長伐期の森づくり」を目指すべく、選木、利用間伐を開始します。そのためには、新たに導入した5.8トンの重機「ウルトラザウルス」を存分に活用する必要があります。 このたびの研修では2日間の時間をかけ、「ウルトラザウルス」によるウィンチ…続きを読む

森を歩く②-屋久島編-

スギと屋久杉 先日、高校の時の研修旅行以来、2度目の屋久島を訪れました。日本の平均年間降水量の2~3倍(山岳部では5倍とも)もの雨の多さで知られる屋久島だけに、一週間の滞在の間もずっと雨続きで、九州最高峰・宮之浦岳山頂からの眺望もまったく得られませんでしたが、その分、屋久島の自然環境と水との深い関係を感じられる山歩きとなり、森というよりも、水そのものの中にいるように感じられる瞬間もありました。 屋久島といえば、1000年以上の樹齢を誇る屋久杉で知られますが、スギは水分をとても好む樹木で、そのことは私の現場である幸地の林内でも、水の通りのよいところのスギが肥大している様子がわかります。一方で、同じ日本の代表的針葉樹であるヒノキが屋久島でほとんど育って(植えられて)いないのは、雨の多さ、水の豊かさゆえに、乾燥を好むヒノキの生育に適していないため…続きを読む

森師(もりし)研修員の現場「幸地町有林」

幸地町有林について 我々「吉賀町」森師研修員が日頃作業を行っている現場が、島根県鹿足郡吉賀町「六日市(むいかいち)IC」のすぐ近く、吉賀町幸地(こうじ)地区にある「幸地町有林」。 およそ50年生のスギとヒノキによって構成される針葉樹の人工林ですが、いま日本全国に散在する、長く適切な管理がされてこなかった「暗く、荒れた森」とは違い、近年は定期的にきちんと間伐がなされてきたために、林内のほとんどの場所は適度に明るく、年輪幅の揃った良質な木々が育つ、「健全な森」です。 吉賀町にはシカの生息数が少ないということもあり、食害もなく、タラノキやコシアブラなどの山菜類や、サカキ、クロモジ、ユズリハなど多くの種類の広葉樹の下草が生えた、気持ちの良い緑の空間です。 この幸地町有林は、森師研修員が作業をする初の現場であるとともに、吉賀町に“大橋式作業道”がつけ…続きを読む