今までの建築の歴史は、一言でまとめれば、ハコを作る建築であった。ハコをより大きく、より高くするという歴史であった。その行きついた先が20世紀の超高層ビルという「大きく、高い」ハコである。ハコに詰め込まれて働くことが、効率的であるとされ、エリートの証であるとされ、大きなハコは世界中を覆いつくした。
このハコのシステムがいかに人間を不幸にしてきたかを、コロナ禍が教えてくれた。そして、ハコの外でも、充分に効率的に仕事ができ、ハコの内側に閉じ込められて、空間も時間も管理される以上に、幸福に暮らせることに、われわれはついに気が付いたのである。
その意味でコロナ禍とは、ひとつの歴史の折り返し点であるように僕は感じる。環境問題も地球温暖化も、今まで、ある意味で「ヒトゴト」であり、自分の問題ではなかった。
しかし、今回、環境問題とは、自分の生命を直接におびやかす、自分自身の問題であることが、全員につきつけられた。われわれは、折り返さなければ生き続けられないのである。
2020年07月06日